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吸血鬼になったキミは永遠の愛をはじめる 感想(※長いです)

たまには読書感想文。

 

 

 

『吸血鬼になったキミは永遠の愛をはじめる』①

著:野村美月

 

ライトノベル。完結済み。

吸血鬼×演劇。

 

 

 

野村美月さんのことは、「むむっ、近年まれにみるよいラノベ作家さんじゃあああ!」と思っています。。

  

 

あらすじ。

 

 イケメンでバスケ大好きな高校生の詩也は、いきなり通り魔に襲われて、「安西先生、バスケがしたいです」(本当にこう言う)と言いながら死にかけます。

で、助かるのはいいんですけど、その代わりに吸血鬼の雫によって不老不死の吸血鬼になり。

 

人をはるかに超える身体能力を得てしまったために、バスケを諦めて他の高校に転校。

そこで、身長が高くてお胸が大きい学園アイドル綾音に「わたしと演劇部、やらないか」(※激しく違う)

と言われ、演劇を始める………

って感じです。

 

 

 どうでもいいけど、「身長が高い美少女」というとBerryz工房熊井友理奈さんを思い出します。181cmのアイドル。すげぇ。

 

「彼女の顔の位置は、詩也に近い」とあるので、綾音は175cm前後とかなんですかね。

詩也は185cm。

 

 

この学校の演劇部は、宝塚っぽいなー、と思いました。

 

綾音が所属する、男女ツートップの「チームレグルス」

男装の麗人がトップの「アルタイル」

知的美人がトップの「デネブ」

アイドル系の「ベガ」

 

の4つのチームがあるらしいです。なんかよくわからないです。(

 

 

 

話を戻して、この「吸血鬼」っていうテーマ、少女漫画とかだったら鉄板です。

女の子だったら、「きゃーエローい」ってわくわくするような。

 

もちろんというかなんというか、この作品でもサービスシーンはたびたびあります。

ムラムラするとキスしたくなって(その奥には吸血衝動がある)、詩也の意思とは逆に強引にしちゃう、みたいな。

やたらエロいです。

 

 

 

でも、別の場面では「呪い」のように書かれてます。

詩也は吸血鬼になったことを全然喜んでないです。その逆。

 

 

 

読んでて、「ああ…」と思いました。

 

  

 「吸血鬼」という砂糖菓子でくるんで、「つらい現実」をゆるく、ロマンチックにして見せているのかな、と

 

 

作者の野村美月さんは闘病中の方なので、「ある意味呪いにかかったような状況で、しかも原則的に死ぬことを許されない状態」を作品に投影しているのかなあ、とか。

 

 

 

ーーーーーーここからネタバレひどいので読みたくない人は飛ばしてくださいーーーーーーー 

 

 

 

 

 

で、綾音とW主演でやることになった「ドラキュラ伯爵」の芝居の稽古をはじめます。

詩也がドラキュラ伯爵で、その人に求愛される役が綾音。

 

 

元々素人だからうまくいかねーしってなったり、そんな中バスケ部でイキイキしてる知り合いを見て「オレも……こんな目をしてたのかな」って思ったり。つらたん。

 

案の定膝をケガした綾音に襲い掛かって血を舐めて、この人にはいかーん!と自分で自分を刺して「もう芝居やれない」と言ったり。

 

 

 

すったもんだの末、詩也が綾音に

「終わりたい……。でもっ、終わらない。死ぬことも、できない。そうだ、死ねないんだっ」

と、泣きながら吐露します。

それに対し、目に強い光を浮かべた綾音が、

「なら!わたしが、詩也くんを殺してあげるっ!」

と叫んで返します。

 

 

 

ここひょっとしたら誤解を生みやすい場面かもと思うのですが、この綾音はかっこいいです。

 

「死なせてあげる」って本当の意味で言っているのではなく、「詩也の苦痛を和らげたいんだ」っていう思いを真摯に伝えてるんですよね。

 

 

 

この時点では、詩也は自分が吸血鬼であることを言っていません。

一見すればたんなる自殺しようとしてる危うい子です。

 

普通だったら取り乱して「死んじゃダメ」とか言うと思うのですが、綾音はそうじゃない。

 

たとえ虚構の終わりだとしても、「(舞台上の役として)命を終わらせてあげる」と言うのです。

 

 

 

かっこいいシーン。

綾音はどちらかというとキレイ系というよりほわほわしててカワイイ系です。

その綾音が真剣なまなざしでこんな言葉を。

詩也は実はヒロインなんじゃないか。

 

 

 吸血鬼になったことに折り合いがつけられず、「死にたいっ。もう嫌だ。終わりにしたい。終わらせてーー。」と絶望していた詩也を綾音はこのとき救います。

  

 

 この時、「恋人」というよりも、「人間同士」として慈しんでいる感じがしました。

 

「この瞬間から、詩也にとって綾音は、パートナーになった」ってあるんですけど、私としては、この時点では単なる男女の関係の1シーンとして捉えたくないなーと思っています。

個人的希望。いいじゃないか、フィクションなんだもの。

 

 

 

余談ですが、私自身どーしても「死にたい」とかそういう言葉に対して敏感になってしまいます…

条件反射でつらくなる。

 

今、出版業界もたぶんそういう言葉を扱うことに厳しいと思うのですが、よくこれ文字にして印刷したなーと…。

もちろん、物語の上でとても大切なワードだと思うのですが。。

 

 

 

で、芝居は無事成功して、詩也は「綾音さんは、オレをーー殺してくれた!」と、さわやかに心の中でそう言います。

 

ラストで、2人はフリではなく本当のキスをして、詩也は綾音への気持ちと、演劇の楽しさを自覚する という。。

脱皮。

 

 

 

吸血衝動にかられた詩也にキスされると、された側は「精気を吸われ、トリップ状態になり、その間の記憶がなくなる」らしいのですが、綾音は記憶を失いません。

 

 

そのことを詩也は不思議に思うのですが、同時にあたたかい気持ちになります。

「ありがとうございます~~(略)~~オレとのキスを、覚えていてくれて」

 

 

いいシーンですな。

綾音以外だと、強引にキスして罪悪感を感じているので。よかったね、と言いたくなります。

 

 

 

 こうしてみると綾音は、絶望していた詩也にいろいろ大切なものを与える存在です。

 

 恋する気持ち、慈しみ、様々な感情を昇華できる演劇という表現方法。

 

なんだかできすぎた女の子なんじゃないかなぁとも思うのですが、そこはラノベだからいいのかな。

こんな一気にプレゼントしてくれる人って現実にはなかなかいないです。

 

 

 

でも、不老不死である詩也は、どうしても綾音より長く生きることになります。

綾音を吸血鬼にしない限りは。する選択肢もあったのかな。

 

その孤独な人生に、「芝居」という、たとえ綾音がいなくなっても、心の支えになるものができたんだな。 

と思います。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーここまでネタバレーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

なんかこの作品、ファミ通文庫っていうよりも、TLみたいな感じがするなぁ、と思います。

なんだか読者が男性中心のレーベルの作品っぽくないなーみたいな。

 

でも面白かったっすーーーーー